前代表取締役に対して支給した給与は交際費なのか!?【税務調査】
2014-10-21
本日の裁決は、
前代表取締役に対して
支給した給与等について、
当該者には勤務実態がないことから
地元対策等に対する謝礼であり、
交際費等に該当するなどとして
法人税の更正処分等を行ったのに対し、
原告が、
その全部又は一部の取消しを求めた
事案です。
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【原告側】は、
前代表取締役は、
役員を退任した後も
登記上の役員ではないものの、
役員に準じた相談役といった立場で
会社の業務に従事している。
前代表取締役の主な業務は、
経営全般のアドバイスや指導、受注の際の根回し、
冠婚葬祭等への対応指示であり、
従業員からの相談を受けるなど
メンタルへルスケアの役割も担っている。
税務署は、
前代表取締役のタイムカードの作成がないことや
業務に従事する時間が短いことをもって
同人の勤務実態がない旨を主張するが、
会社においては、
役員や管理職のタイムカードの作成はなく、
前代表取締役は
役員に準じる相談役といった地位にいる者であり、
一日を通して会社に滞在する必要性はないから、
税務署の主張には理由がない。
また、会社の現在の代表者は地元の者ではないため、
地域とのつながりが薄いことから、
前代表取締役の業務の一環として
地元住民との調整を行ってもらっているものである。
したがって、本件各金額は、
前代表取締役に対して労務の対価として支給した給与であり、
交際費等には該当しない
と主張する。
【税務署側】は、
原告の関連会社を含む原告の組織を記載した
「○○グループ運営図」と題する書面(以下「本件運営図」という。)には、
前代表取締役の名前の記載がなく、
同人は従業員の人数にも含まれていないこと、
同人のタイムカードが作成されていないこと、
請求人の事務所に本件支給対象者の席がなく、
1時間程度会社の事務所に赴いて
従業員の話し相手をしているだけであることからすれば、
前代表取締役は、会社に対して人的役務の提供を行っていない。
前代表取締役は、
会社の前代表者であり、
会社の事業関係者等に該当する。
会社は、前代表取締役が地元に対して影響力を有していることから、
地元対策や取引関係の円滑化の目的で
同人の影響力に対する謝礼金として
本件各金額を支出している。
以上からすると、本件各金額は、
措置法第61条の4第3項に規定する交際費等に該当する
と主張した。
これに対して、
【裁判官の裁決】は、
前代表者は、
取締役を退任する際に現在の代表者から、
請求人と事業所周辺の住民との協調関係を維持すること、
同業者及び取引先との調整等に協力すること、
及び、請求人の従業員から相談を受けることや
指導をすることなどの業務の依頼を受けており、
代表取締役を退任した後、
請求人の事務所に毎日出勤して
これらの業務を行っていたと認められる。
そうすると、会社と前代表者との間には
雇用契約又はこれに類する合意が成立していると認められ、
前代表者は、会社の事務所等において、
会社の指揮命令に服して、
継続的又は断続的に労務の提供を行っていたと
認められることから、
本件各金額は、
労務の対価として支給した給与等に該当し、
謝礼金(交際費等)には該当しない
とした。
「平成24年3月6日裁決」
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会社の代表が退職したあとも
会社からお金を支払うことがあります。
しかし、役員でも従業員でもない
前代表に支払う金銭は
いったいどのような扱いにするのが
正しいのか?
あくまで
その支払う根拠から
考えていくのですが、
そうすると今回の場合は
役員給与扱いの方が
正しいと思われます。
ただ、今回のように
税務署側も主張を
曲げずにことがあります。
役員給与でも
交際費でも
所得税として取るか
法人税として取るか
結局、税金を支払うということには
変わりがないように思えますが。
推測するに
今回の原告は
資本金1億円超の大会社で
今回の税務調査官は
法人課税専門の調査官であった
と考えられます。
税務調査官の経歴や
得意分野がわかると
税務調査時においても
対処の取り方も変わり
有利に調査を進めることができます。
ご不明な点は
お気軽に中島税理士・行政書士事務所まで
お問い合わせください。