取締役会長に支払われた役員報酬及び役員退職給与には、不相当に高額な部分の金額が含まれているとは認められないとした事例【税務調査】
2014-07-10
(1)事案の概要
建築工事業を営む同族会社である審査請求人(以下「請求人」という。)が、
その取締役会長に支払った報酬の額及び退職給与の額が過大か否か
並びに同人に支払われた見舞金が同人に対する賞与等に該当するか否かを
主な争点とする事案である。
(2)基礎事実
以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、
当審判所の調査によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、法人税法第2条《定義》第10号に規定する同族会社である。
ロ 請求人の取締役会長であったH(以下「H」という。)は、
請求人が昭和45年7月13日に設立された際の発起人である。
ハ Hは、請求人の設立と同時に代表取締役社長に、
平成2年9月17日に代表取締役会長に、平成5年7月20日に取締役相談役に就任し、
平成7年9月14日から死亡した平成12年4月21日までは取締役会長であった。
(3) 判決
【原処分庁の主張】
は、請求人が取締役会長に支払った役員報酬の額及び退職給与の額につき、
同人は長期入院のため通常の勤務ができなかったものであり、
非常勤取締役と認められる。
そして、類似法人の非常勤取締役に対する役員報酬の支給状況によると、
同人に対する適正報酬額は50万円と認められるから、
それを超える部分は、
法人税法第34条第1項に規定する「不相当に高額な部分の金額」に当たるため損金の額に算入できない。
また、退職給与の額のうち、この適正報酬額を基礎として算定した金額を超える部分も、
法人税法第36条に規定する「不相当に高額な部分の金額」に当たるため、
損金の額に算入できない。
【判決】
取締役会長は、入退院を繰り返しているものの、
相当程度の頻度で請求人の職務に従事していたもので、
同人は常勤の取締役と認められる。
そして、類似法人の常勤取締役会長に対する役員報酬の支給状況等に基づき検討すると、
同人に対する役員報酬12,000,000円の額が不相当に高額であるとは認められないから、
原処分庁の主張は採用できない。
35,400,000円の退職給与額は、
請求人の役員退職功労金支給規定に基づき、
退職慰労金については退職時の最終月額報酬額にHの役員在任年数及び功績倍率をそれぞれ乗じ、
功労金については退職時の最終月額報酬額にHの役員の在任年数を乗じ
及び弔慰金については退職時の最終月額報酬額の6ヶ月分として算出し、
これらの合計額であるところ、
Hの退職時の最終月額報酬額を除き、
算出方法並びにHの役員在任年数及び功績倍率については、
請求人及び原処分庁双方に争いがなく、
当審判所の調査においても本件退職給与額は適正であると認められる。
【原処分庁の主張】
請求人は、取締役会長に支払った3,995,000円の見舞金につき、
合理的な社内規定に基づくものであり、
その全額が福利厚生費に該当する旨主張する。
【判決】
類似法人の役員に対する見舞金の支給状況によると、
福利厚生費としての見舞金の上限は入院一回当たり5万円と認められるから、
当該金額を超える部分は取締役会長に対する賞与に該当する。
「平成14年6月13日裁決」