製薬会社が医師等の論文の英文添削費用の差額を負担したら交際費!?【税務調査】
2014-11-05
製薬会社で
大学病院の医師等の研究論文の
英文添削をする際に
医師等から実際に受け取っている
添削代金よりも多い費用分を
製薬会社が
負担している場合に
差額費用部分が
交際費に当たるかどうかを
争った
裁判です。
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【納税者】は、
英文添削の対象者は
医学部または医科系大学に所属する研究者であるが、
医薬品の処方に携わらない研究者や留学生、研修医など
医薬品購入に関与しないものが多く含まれており
すべてが事業関係者ではないこと
英文添削された論文すべてが
雑誌に掲載されるわけではないこと
また、研究者は
製薬会社が英文添削料の差額を負担していることを
知らなかったこと
などから
支出は「接待、供応、慰安、贈答」
あるいは「これらに類する行為」
には該当せず
交際費ではない
と主張した。
【税務署】は、
英文添削やその差額負担は
医師にとって
一般的な飲食等に代表される接待交際費と
実質的に何ら変わりがない
精神的な欲望をみたすものである。
また、製薬会社と医師等は
事業関係者にあたり
取引関係の円滑な進行を図るために支出する
交際費である
と主張した。
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いきなり、裁決を見るのではなく
これはどういう判決になるか
すこし考えてみてください。
税務というと
決算書の数字や申告書をイメージするかもしれませんが、
そもそも税法に則った判断処理のこと
なのです。
その判断処理を間違えると
払う必要のないキャッシュが
会社から失われてしまう可能性があります。
この判断処理を
今まで間違っていた納税者の割合や
なんと7割以上(国税庁のHPより)
判断処理
大丈夫ですか?
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【裁判官の裁決】は、
英文添削の依頼者である研究者らが
事業に関係ある研究者であることは
否定できない。
支出目的は
英文添削の依頼を受ける際に
事前に公正取引委員会に確認の上
指導にしたがって料金を取ることとしていた点、
当初は海外への研究論文を発表したいという
若手研究者を支援するという目的であった点
からすると
交際目的であったとは
認めがたい。
英文添削の差額負担自体
相手方の歓心を買える
というような性質のものではなく
学術的要素が高い点
金銭の贈与と同視できない点から
「接待、供応、慰安、贈与に類する行為」
に該当するとはいえない。
以上の点から
英文添削の差額負担は
交際費に該当しない
とした。
「平成15年9月9日判決」
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医療機関と製薬会社・医療機器会社は
密接な関係にあります。
その関係から
過去において
国立機関における
贈収賄事件が発覚したことは
少なくありません。
これらの事情を考慮すれば
英文添削の便宜を図ることも
製薬会社の経営戦略の一環である
という指摘も否定はできない
と言わざるおえない。
しかし、今回の事案は
まずは実質的な検討を行うべきであるという
判断を裁判所が行ったことで
わたしたちの実務上の判断に
大きな影響を及ぼす
判決となりました。
ご不明な点は
お気軽に中島税理士・行政書士事務所まで
お問い合わせください。