債務免除をした時に期限切れの繰越欠損金を使える!?【税務調査】
2019-07-03
借入金などの 債務を返済しなくてもよい ということになると 会社としては 有難いこと。 しかし、 そうした場合、 債務免除益という 収益を立てなければ いけません。 そうすると せっかく債務を返済しなくても よくなったのに 税金を 払わなければ いけなくなると 何とも 有り難くないことになります。 けれども 会社の経営状態が 危機的状態に 陥っている場合は 期限切れの欠損金を 損金として 使うことができ 税金の額を 減らすことができます。 これが、 法人税法59条2項 (会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入) です。 今回は 債務免除と この法人税法59条2項を 巡る 争いについて 解説していきます。 ────── ∞ ────── ∞ ────── ∞ ─────── 【納税者】、 債権放棄による 債務免除を受けた時点において、 納税者は、 確かに経営の危機という 状況にはなかったが、 このまま債務超過の状態を 放置すると いずれは 会社が成り立たなくなることは 目に見えていた。 もし 債権放棄による 債務免除がなければ、 売上げは 減少し続け、 倒産の危機に 陥っていた。 納税者は、 債権放棄により 累積欠損金を 解消できると考え、 臨時株主総会を開催し、 Aらに 債権放棄を要請することを 決議した。 また、 Aらに対する債務額が、 納税者の債務合計額の 過半額を超えており、 整理解消すべき 累積欠損金をも 超えていることから、 あえて債権者集会は開かず、 J銀行等他の債権者への 債権放棄の相談、要請を 行わなかった。 したがって、 債権放棄の 要請を行うこととした 決定には、 恣意性がない。 また、 納税者は、 納税者の経営について 改善が必要な問題点 とその改善方法が 具体的に示してある 経営改善計画書を E銀行P支店に 提出している。 したがって、 債権放棄による 債務免除に係る資産の整理は、 その内容に 合理性がある。 以上のことから、 債権放棄による 債務免除は、 基本通達に即しており、 法人税法施行令117条4項に規定する 「前3号に掲げる事実に準ずる事実」 に当たり、 法人税法59条2項の規定に 該当する と主張した。 【税務署】、 債権放棄による 債務免除を受けた時点において、 納税者は、 資金繰りが ひっ迫しているような 状況にあったとはいえず、 そもそも 法人税法59条2項の 適用の 前提となる 経営危機の状態に 陥っていたとは 認められない。 納税者は、 債権放棄による 債務免除を受けるにあたり 債権者委員会等を開催せず、 Aらと同様に 納税者に対して 債権をもつ J銀行等の債権者に 納税者の再建を図る 相談や 債権放棄に関する 通知等を 一切行っておらず、 Aらの親族によってのみで 臨時株主総会を開催し、 出席者である Aらのみによって 債権放棄を 実行している。 したがって、 債権放棄による 資産の整理は、 恣意的であると いわざるを得ない。 また、 納税者は、 債権放棄による 債務免除に当たり、 具体的な再建の計画を 立案しておらず、 債権放棄の額が 合理的な基準によるものでなく、 債権放棄による債務免除は、 単に新規事業 と本店移転のための 融資を得ることを 目的としたものであり、 経済的合理性を 有していたとは 認められない。 以上のことから、 債権放棄による 債務免除は、 基本通達に定める 要件を満たしておらず、 法人税法施行令117条4項に規定する 「前3号に掲げる事実に準ずる事実」 にもあたらないことから、 法人税法59条2項の規定に 該当しない と主張した。 ────── ∞ ────── ∞ ────── ∞ ─────── どちらの主張が 正しいのでしょうか? いきなり、裁決を見るのではなく これはどういう判決になるか すこし考えてみてください。 税務というと 決算書の数字や申告書をイメージするかもしれませんが、 そもそも税法に則った判断処理のこと なのです。 その判断処理を間違えると 払う必要のないキャッシュが 会社から失われてしまう可能性があります。 この判断処理を 今まで間違っていた納税者の割合や なんと7割以上(国税庁のHPより) 判断処理 大丈夫ですか? 本来の裁判判決は 難解で読むづらいものになっていますので、 読みやすいように多少 書き換えています。 ────── ∞ ────── ∞ ────── ∞ ─────── 【裁判官の裁決】、 納税者は、 平成13年9月期から 債権放棄による債務免除を受けた 事業年度の 前事業年度までの期間において、 貸借対照表上は 債務超過に状態にあったと 認められる。 また、 納税者の前代表取締役であるCは、 納税者の債務超過の状態を 放置すれば、 いずれ納税者は 成り立たなくなるため、 累積債務の解消は 長年の懸案であった旨を 答述していることから、 債権放棄による 債務免除は、 納税者を 再建するために 行われたとも うかがえる。 しかしながら、 納税者は、 臨時株主総会において、 債権放棄を Aらに要請することを 決議しただけで、 債権者集会で協議を行うなど、 基本通達に定める、 法律等の定めに準じた 一連の手続等は 行われていないと 認められる。 また、 Cは、 納税者が それまでに J銀行からの借入金の返済 や仕入先に対する支払が滞るなど、 納税者が破産の危機にあったとか、 事業の継続に 著しい支障を 来たすような状況にはなかったと 答述していること、 納税者は 事業年度の直前期末における 借入金の約76%を占める 借入金の債権者であるAらから 債権放棄の直前までに 一括返済を迫られるなど 納税者の経営を 圧迫するような事態が 発生した事実も 認められないことから、 納税者は、 債権放棄による 債務免除を受けた直前の 平成16年9月期の事業年度末において、 貸借対照表上、 債務超過の状態にはあるものの、 事業経営が 成り立たなくなるほどの 経営の危機に 陥っている状態では なかったと 認められる。 なお、納税者は、 貸借対照表上、 債務超過の状態にありながらも、 E銀行P支店から融資を受けて、 ○○地裁から 本件競売物件を 取得していることが 認められる。 そうすると、 納税者は、 競売物件の取得等に係る 資金として 融資を受けるには、 E銀行P支店からの求めに応じて 債務超過の状態を 解消する必要があったことから、 納税者の財務内容を 表面上改善するために Aらに本件債権放棄の要請を 行ったものと認めるのが 相当である。 以上のとおり、 債権放棄による債務免除は、 多数の債権者によって 協議の上 決められたものでなく、 単に納税者と Aらとの間における 私的な協議によって決定され、 その内容が一定の計画のもとに 合理的に定められたものではないと 認められることから、 法人税法施行令117条4号に規定する 「前3号に掲げる事実に準ずる事実」 に当たらない とした。 「東京高等裁判所 平成22年9月15日判決」 ────── ∞ ────── ∞ ────── ∞ ─────── 法人税法59条2項は 会社の経営が 成り立たない。 つまり ほぼ倒産状態の会社を 再建させるための 臨時的な措置。 そのため 容易に適用できるようには なっておらず、 債権者全員を集めて 会社の危機的状況を 通知し相談する 債権者集会を 開くことが 一つの条件と なっています。 債権者集会を 開けば この会社は 本当に危ないんだと 知らせることになるため 容易には 開催できません。 他にも 会社更生法に則った再建 民事再生法に則った再建などで 適用できますが、 そこまでしないと 法人税法59条2項は 適用できないので、 債務免除と 法人税法59条2項を 使うときは ご注意ください。 ご相談、ご不安なことが ありましたら、 お気軽に 中島税理士・行政書士事務所まで お問い合わせください。 セカンドオピニオンとしても 税務調査対策としても ご提案を致しております。